Page top

OMRON

社会システムJapan

オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社
橋梁のモニタリングシステムを開発 社会インフラの安全に貢献する
国道9号 飯田角井大橋にて撮影

日本の高度成長期につくられた築後50年を超える橋梁や道路は年々増え続け、その維持管理が重要な問題になっています。
とりわけ人による定期点検の難しい橋梁をモニタリングし、効率的で高精度な維持管理に役立てたい。
そうした思いでオムロンソーシアルソリューションズ(以下、OSS)は、東京工業大学と連携し、橋梁のモニタリングシステムを開発しています。

老朽化が進む全国の橋梁。社会インフラの一端を担ってきた企業として貢献できることはないか?

日本全国には約70万の橋梁があり、そのうちの約18%は建設されてからすでに50年以上が経過しています。※1日本の道路インフラが整備されたのは、高度成長期の1960年代から70年代。築後50年を超える橋梁は、今後ますます増えていくことがわかっています。

橋梁の老朽化が進む一方で、交通量は数倍に増加。しかも物流が発達したことで重量の重い大型車両が飛躍的に増え、橋梁へ負担はますます大きくなっています。このまま放っておけば、橋梁の劣化は進むばかりです。 OSSは、1960年代から道路交通管制システムの開発・製造に携わってきました。社会インフラの一端を担ってきた企業として、こうした問題の解決に貢献できることはないか? そう考えたのが、後に「橋梁のモニタリングシステム」の開発を始めることになる最初の一歩でした。

  • ※1 出典 国土交通省 インフラメンテナンス情報 ポータルサイト
  • 社会資本の現状と将来/社会資本の老朽化の現状と将来
東京工業大学と連携。土木工学の知見を得て発想を転換。
国道9号 飯田角井大橋にて撮影

橋梁の維持管理に欠かせない定期点検は、5年に一度、人による目視で行われています。※2橋梁は近づくのが難しい場所に建っているものもあり、実際の点検場所は危険と隣りあわせで、人手による点検は十分に注意が必要です。橋梁の点検を高度化・効率化し、橋梁の維持管理の効率化に役立つシステムの開発が待ち望まれています。 OSSは道路で車両の重量を計測するシステムを開発していましたが、その活用法を検討する中でこの課題を知り、解決に挑戦することを決めました。

「とてつもなく大きな課題にチャレンジしようとしている」。開発をスタートさせた当初、プロジェクトの中にはそんな不安な声も聞かれました。しかし、「なんとしてもこの課題を解決したい、社会インフラにかかわってきたOSSの使命だ」という思いが、チャレンジの後押しになりました。 橋梁の劣化を継続的に捉えるのは非常に難しいからです。橋梁が極めて大きな構造物であるのに対し、劣化は数年、数十年をかけて少しずつ進みます。そうしたわずかな変化を正確に捉えるには、発想の転換が必要でした。 そんな時、東京工業大学で土木工学を専攻としている佐々木栄一准教授※3から「モニタリングの目的を明確にすることが先決です。」というアドバイスをいただきました。それまで、橋梁の状態を測定するには“どのようなセンサを開発すべきか?”と考えていたOSSにとってこの言葉が大きく発想を転換するきっかけになりました。

モニタリングの目的にそぐわなければ、高精度なセンサも役には立ちません。そこで私たちは、まず平常時と突発的異常時の二つの場合を想定し、「橋梁の状態をモニタリングする」という目的を確認した上で、そのために必要な劣化損傷の分析手法、その分析に必要な物理量や最適な変動範囲(パラメータ)、設置場所や測定時期・期間など順を追って一つひとつ導き出していきました。 東京工業大学の持つ土木工学に基づいた分析技術とオムロングループが保有するセンシング技術を掛け合わせ、体系的にデータをまとめ上げ、モニタリングするための仕様を決定することができました。

仕様が決まっても技術的に克服すべき課題がいくつもありました。特に難しかったのが、アクセスしにくい場所に設置でき、しかも屋外という過酷な環境で長期にわたって高い信頼性を保つことでした。そのため機器を小型化・省力化し、ワイヤレスで通信する仕組みを考えました。 屋外環境に強い機器の開発にあたっては、道路交通管制事業を通じて培った技術が役立ちました。

  • ※2 出典 国土交通省 インフラメンテナンス情報 ポータルサイト
  • 法令・基準類・マニュアル類/法令・基準類の道路法施工規則
  • ※3 東京工業大学 理工学研究科土木工学専攻  佐々木栄一准教授
  • 研究分野: 鋼構造、維持管理、構造モニタリング
国土交通省の事業に採択され5年計画で橋梁のモニタリングを開始。
国道9号 飯田角井大橋にて撮影

こうしてまずは「橋梁モニタリングシステム」のプロトタイプが完成しました。複数のセンサ端末(センサーノード)で、加速度の他ひずみや傾斜、温度や湿度などを測定し、得られたデータを橋のたもとに設置した基地局に無線で送信・集約、それを遠隔地にあるサーバに送信してデータを分析する仕組みです。 2014年には国土交通省の「社会インフラへのモニタリング技術の活用推進に関する技術研究開発に係る公募」に採択され、5ヵ年計画で現場実証を行うことが決まりました。2015年11月から、モニタリングを開始しています。今後は、収集したデータを分析し診断に結び付けていくことで、維持管理の高度化、効率化に役立つ実用性の高いモニタリングシステムを提供していきます。

「橋梁モニタリングシステム」は、単に人による点検作業を代替するものではありません。これまで計測できなかったさまざまな物理量を捉えることで、まったく新しい価値を提供できるものです。安全な橋梁の維持管理はもちろん、防災など幅広い分野に役立つ価値を生み出すことで、これからも社会インフラに貢献していきたいと考えています。

国土交通省 公募内容 維持管理の高度化・効率化に係るモニタリングシステムの現場実証
本研究(の一部)は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の「SIP インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」(管理法人:国土交通省)によって実施されました。